国際課税と富裕層の相続税対策


国際課税と富裕層の相続税対策

FROM 個人のお客様のための佐々木健税理士事務所(東京 東久留米市)




 武富士事件やパナマ文書の影響もあるのでしょうか国税当局はここ数年国際課税に係る対策強化を図っています。そこで時系列に国際課税への対策を追ってみたいと思います。

国外財産調書制度 2014年スタート
 海外に5,000万円以上の財産を保有する個人に財産の種類や価額を全て調書に記し翌年の3月15日までに所轄税務署長に提出することを義務付ける制度。初年度は5,539件、2年目の昨年度は8,184件の提出がありました。

国外転出時課税制度(出国税)2015年7月スタート
 海外に移住する際、1億円以上の有価証券を所有していれば、その含み益に課税されます。昨年7月に導入されると今年4月に93億円の徴税に成功しました。富裕層の海外逃避は激減したとも言われています。

超富裕層監視PT 2015年7月スタート
 東京・大阪・名古屋の各国税局に超富裕層を監視するPTを発足させ、日常的な監視を強化しています。なお、報道によれば保有資産総額が数億円以上で、国際的租税回避行為が想定される富裕層をターゲットにしていると言われています。

財産債務調書制度 2016年スタート
 今年から始まった制度で、財産債務調書制度は、所得税及び復興特別所得税の確定申告書を提出しなければならない方が、その年の総所得金額及び山林所得金額の合計額が 2,000 万円を超え、かつ、その年の12月31日において価額の合計額が3億円以上の財産又は 価額の合計額が1億円以上である国外転出特例対象財産を有する場合に、財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額などを記載した「財産債務調書」を、翌年の3月15日までに所得税の納税地の所轄税務署長に提出する制度です(国外送金等調書法6の2①本文)。 

自動的情報交換制度 2018年から強化
 2018年からOECD(経済開発協力機構)諸国を中心に運用が始まる予定の国外の税務当局間で金融口座情報を交換する制度です。国税庁は、日本国内の金融機関から非居住者のが保有する口座の氏名、残高、利子・配当の年間受取額などの情報を吸い上げ、これらの情報を非居住者の居住地国や地域ごとに仕分けし、当該国の税務当局に情報を提供することになります。日本も同様に、外国の税務当局から日本の居住者の口座情報の提供を受けることになります。なお、金融口座には、証券口座や、投資型の保険口座も含まれます。この自動的情報交換制度自体は日本の場合、二国間の租税条約をベースに送金情報の交換が行われていましたが、今後新たに口座の残高情報が加わることになります。

 以上のように国際課税の対策が強化されていることもあり、富裕層は対策が図られた国際課税のスキームから離れ、国内での相続税対策スキームで節税を図っていくことになると一部では報道されています。

 さて、参考として国内での相続税対策のスキームの幾つかを紹介しておきます。

スキーム1:資産管理会社を使い株式の評価を下げる方法 
 上場企業の自社株50%を保有しているオーナーの場合。資産管理会社を設立し、自社株の47.1%を資産管理会社に譲渡し、手元に2.9%の自社株を保有する。自社株の保有を3%未満に抑えることで配当所得の課税を軽減することが可能になる。一方、資産管理会社は、自社株の3分の1超を保有することになるので、配当金が益金不算入の対象となることでこちらでも節税効果を享受可能となる。そして、資産管理会社は、金融機関から資金を借り入れ、不動産や航空機リースに投資することで、資産に占める株式比率を50%以下に抑制し、株式保有特定会社の適用を免れ、類似業種批准方式で評価することにより、資産管理会社の評価を下げる。評価の下がった資産管理会社の株式をを相続することにより、相続税の節税を図るというスキームである。

スキーム2:不動産の時価と路線価の差を狙う方法 
 資産管理会社を設立し、不動産を購入する方法。法人が購入した土地は、購入から3年が過ぎれば、時価ではなく路線価で評価される。東京都心など、時価が路線価より割高な土地を購入すれば3年後には場合によっては評価が半分になる。その時点で贈与税を払って後継者に資産管理会社の株式を譲り、後継者が3年前の時価相当額で土地を売り払えば、相続税を払うより安いコストで資産を承継できる。
 これに関連して、所謂
「タワマン」節税についても簡単に説明しておきます。
 仕組みは簡単で、タワーマンションは通常、高層階の方が低層階に比べて価格が高い。一方、相続税の評価額は階の高低にかかわらず一律になることを利用した節税方法。しかしながら、行き過ぎた節税対策であるとして2015年9月に国税庁が全国の税務署に対し「財産評価基本通達」6項の活用により対策の監視強化を指示していることから「タワマン」節税は、今後は活用が難しいと考えられる。

スキーム3:公益財団設立を用いる方法 
 公益財団法人は学術や科学技術、文化、芸術の振興など公益性の高い事業を行うことが目的で設立には内閣府や自治体の認可が必要であるが、この認可を得られれば、節税メリットは非常に大きいと言える。それが証拠に、公益財団法人が大株主に名をつらねる上場企業が少なくない。1つ目のメリットは、通常は譲渡所得として課税される自社株の寄付が、公益財団法人への寄付の場合、非課税となること。2つ目のメリットは、寄付を公益目的事業に使うように使途を制限することにより、公益財団法人が受け取る自社株式に係る配当金に対する法人税が非課税となること。3つ目のメリットは、相続の際に相続する自社株式の一部を公益財団法人に寄付することで寄付した自社株式を合計持分50%までは相続税の対象から外すことが可能となること。最大のメリットが、設立した公益財団法人が安定株主として自分の死後も存在し続けることである。


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