セルフメディケーション税制


セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の創設

FROM 個人のお客様のための佐々木健税理士事務所(東京 東久留米市)



 平成29年1月1日からセルフメディケーション税制が施行されます。従来の医療費控除との関係や注意しなければならない点についてお話ししたいと思います。
 まずは、その概要について知るために財務省が発表している「平成28年度 税制改正の解説」から該当部分の一部を引用します。

平成28年度 税制改正の解説(一部引用)

セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の創設

1 制度創設の趣旨

「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27 年 6 月30日閣議決定)においては、社会保障分野 について「国民の納得感を醸成し、その参加の下 に改革を進める観点から、インセンティブ改革に よる多様な主体の行動変化による効率化に取り組 む」こととされた上で、「個人の健康管理に係る自発的な取組を促す観点から、セルフメディケーションを推進する」ことが謳われているところです。 こうした方針を踏まえてセルフメディケーションを推進していく中で、医療用医薬品と同じ有効成分が含まれる市販薬(いわゆるスイッチOTC 薬)を代替的に使用することを促進することにより医療費の適正化を図る観点から、スイッチ OTC薬の購入費用に係る医療費控除の特例を設 けることになりました。

(参考 1 ) 「セルフメディケーション」とは、世界保健機関において、自分自身の健康に責 任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手 当てすることと定義されています。
(参考 2 ) 「スイッチOTC薬」とは、元来、医療用 医薬品(処方薬)として使われていた有効成分が、有効性や安全性に問題がない と判断され、薬局で店頭販売できる市販 薬に転換(スイッチ)されたものをいいます。「OTC」 は「Over The Counter」 の略であり、町の薬局のカウンター越しで売られる薬を意味します。
(参考 3 ) この特例の導入により、軽い病気にか かった人が医療機関に行って、処方薬を受け取るのでなく、処方薬と同じ有効成分が含まれる市販薬(スイッチOTC薬) を薬局で購入するようになることで、医療費の適正化効果が期待されています。

2 制度の内容

(1) 制度の概要

医療保険各法等の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高い一般用医薬品等の使用を推進する観点から、居住者が 平成29年 1 月 1 日から平成33年12月31日までの 間に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定一般用医薬品等購入費を支 払った場合においてその居住者がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っているときにおけるその年分の医療費控除については、その者の選択により、その年中に支払った特定一般用医薬品等購入費の金額の合計額が 1 万 2 千円を超えるときは、 その超える部分の金額( 8 万 8 千円を限度)を、その居住者のその年分の総所得金額等から控除 することができることとされました(措法41の17の2 )。

(参考) 医療費控除の概要

居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の医 療費を支払った場合には、次の算式により 計算した金額(200万円を限度)を、医療費 控除として、その年分の総所得金額等から 控除することができます(所法731)。
なお、医療費控除の対象となる医療費の 範囲は、次のものの対価のうち、その病状その他一定の状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とされています(所令207)。

1 医師又は歯科医師による診療又は治療 の対価
2 治療又は療養に必要な医薬品の購入の 対価
3 病院、診療所、指定介護老人福祉施設 又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、き ゅう師、柔道整復師等による施術の対価
5 保健師、看護師又は准看護師による療養上の世話の対価
6 助産師による分べんの介助の対価 
7 介護福祉士による喀痰吸引等又は認定 特定行為業務従事者(一定の研修を受けた介護職員等)による特定行為

(2) この特例の趣旨

この特例の趣旨として、租税特別措置法第41 条の17の 2 第 1 項において、「医療保険各法等 の規定により療養の給付として支給される薬剤 との代替性が特に高い一般用医薬品等の使用を 推進する観点から、 」と明確に条文に規定されています。 

(3) この特例の適用を受けられる者

この特例の適用を受けられる者は、居住者で、 その年中に健康の保持増進及び疾病の予防への 取組として一定の取組を行っている者とされています(措法41の17の 2 ①)。この一定の取組は、法律又は法律に基づく命令(告示を含みます。)に基づき行われる健康の保持増進及び疾 病の予防への取組として厚生労働大臣が財務大 臣と協議して定めるものとされ、具体的には告示において次の取組とされています(措令26の 27の 2 ⑮、平成28年 3 月厚生労働省告示第 181号)。以下この一定の取組を「取組」といい ます。 

 1 医療保険各法等の規定に基づき健康の保持増進のために必要な事業として行われる健康 診査又は健康増進法第19条の 2 の規定に基づ き健康増進事業として行われる健康診査【いわゆる健康診査であり、保険事業や健康増進事業として行われる人間ドックなどが該当します。】
(注) 「医療保険各法等」とは、高齢者の医療の 確保に関する法律第 7 条第 1 項に規定する 医療保険各法及び高齢者の医療の確保に関する法律をいい、同項に規定する医療保険 各法は、健康保険法、船員保険法、国民健 康保険法、国家公務員共済組合法、地方公 務員等共済組合法及び私立学校教職員共済法です。

2 予防接種法第 5 条第 1 項の規定に基づき行 われる予防接種又はインフルエンザに関する 特定感染症予防指針第 2 の 2 の規定により推 進することとされる同法第 2 条第 3 項第 1 号 に掲げる疾病に係る予防接種【高齢者の肺炎球菌感染症及びインフルエンザの予防接種並びに任意のインフルエンザの予防接種などが 該当します。】

3 労働安全衛生法第66条第 1 項の規定に基づき行われる健康診断(同条第 5 項ただし書の規定により、労働者が事業者の指定した医師 が行う健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同条第 1 項の規 定による健康診断に相当する健康診断を受け、 その結果を証明する書面を事業者に提出したときにおける健康診断を含みます。)【いわゆ る事業主健診です。】

4 高齢者の医療の確保に関する法律第20条の 規定に基づき行われる特定健康診査(同条た だし書の規定により、加入者が特定健康診査 に相当する健康診査を受け、その結果を証明する書面の提出を受けたときにおける健康診 査及び同法第26条第 2 項の規定による特定健 康診査に関する記録の送付を受けたときにおける特定健康診査を含みます。)又は同法第 24条の規定に基づき行われる特定保健指導【いわゆるメタボ健診などが該当します。】 

 5 健康増進法第19条の 2 の規定に基づき健康 増進事業として行われるがん検診【市町村が 健康増進事業として行う乳がん、子宮がん検診などが該当します。】 

 なお、納税者本人(この特例の控除を受ける者)が取組を行うことは要件とされていますが、 その者と生計を一にする配偶者その他の親族が 取組を行うことは要件とはされていません。

(4) 特定一般用医薬品等購入費

この特例の対象となる特定一般用医薬品等購入費とは、次の医薬品である一般用医薬品等 (新医薬品に該当するもの及び人の身体に直接使用されることのないものを除きます。)のうち、医療保険各法等の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高いものとして厚生労働大臣が財務大臣と協議して定めるものの購入の対価をいいます(措法41の17の2 12、措令26の27の 2 2)。 

1 その製造販売の承認の申請に際して既に承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、 用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる 医薬品

2 その製造販売の承認の申請に際して1の医 薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められる医薬品

 (注 1 ) 「医薬品」とは、医薬品、医療機器等の品 質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第 2 条第 1 項に規定する医薬品をいいます。
(注 2 ) 「一般用医薬品等」とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第 4 条第 5 項第 3 号に規定する 要指導医薬品及び同項第 4 号に規定する一 般用医薬品をいいます。
(注 3 ) 「新医薬品」とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する 法律第14条の 4 第 1 項第 1 号に規定する新 医薬品をいいます。
(注 4 ) 「製造販売の承認の申請」とは、医薬品、 医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第 3 項の規定による同条第 1 項の製造販売についての承認の申請又は同法第19条の 2 第 5 項において準用する同法第14条第 3 項の規定による同法 第19条の 2 第 1 項の製造販売をさせることについての承認の申請をいいます。
(注 5 ) 「承認」とは、医薬品、医療機器等の品質、 有効性及び安全性の確保等に関する法律第 14条又は第19条の 2 の承認をいいます。

(5) 適用期間等

平成29年 1 月 1 日から平成33年12月31日まで の間に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定一般用医薬品等購入費を支払った場合に、この特例の適用が受けられることとされています(措法41の17の2 ①)。

(6) 医療費控除との選択適用

この特例は、この特例を適用しない医療費控除(上記 2 (1)(参考)の医療費控除です。以下 「従前の医療費控除」といいます。)との選択適用とされています。つまり、この特例による医療費控除と従前の医療費控除は、制度的な選択適用とされており、いずれかの制度を選択して適用することになりますので、この特例による 医療費控除を適用する場合には従前の医療費控 除を適用することができず、従前の医療費控除 を適用する場合にはこの特例による医療費控除を適用することができません(措法41の17の 2 ①)。 したがって、この特例による医療費控除の適用を受ける場合には、たとえこの特例の対象となる特定一般用医薬品等購入費以外の医療費の額が適用下限額(10万円と総所得金額の 5 %相当額のいずれか低い方の金額)を超える場合であっても、従前の医療費控除を併せて適用することはできません。

(7) 控除額の計算

その年中に支払った特定一般用医薬品等購入 費の金額の合計額が 1 万 2 千円を超える場合に、その超える部分の金額( 8 万 8 千円を限度)を、 その居住者のその年分の総所得金額等から控除できることとされています(措法41の17の 2 ①、 措法41の17の 2 ①による読み替え後の所法73)。

(8) 年の中途で非居住者が居住者となった場合のこの特例の適用 その年12月31日において居住者である者でその年において非居住者であった期間を有するもの又はその年の中途において出国をする居住者でその年 1 月 1 日からその出国の日までの間に非居住者であった期間を有するものに対してこの特例を適用する場合には、従前の医療費控除と同様に、その者が居住者期間内に支払った特定一般用医薬品等購入費の金額が 1 万 2 千円を 超えるときに、その超える部分の金額( 8 万 8 千円を限度)を、その者のその年分の総所得金額等から控除できることとされています(措法 41の17の 2 ③、 措令26の27の 2 ③、 所法102、措令26の27の 2 ③による読み替え後の所令258③)。

(9) この特例の適用を受ける場合の確定申告書に添付すべき書類 この特例の適用を受ける場合には、次の書類を確定申告書に添付又は確定申告書の提出の際に提示しなければならないこととされています(措法41の17の 2 ③、措令26の27の 2 ④、所法 120③、措令26の27の 2 ④による読み替え後の所令262①、措規19の10の 2 )。 

 1 この特例による控除を受ける金額の計算の基礎となる特定一般用医薬品等購入費につきこれを領収した者のその領収を証する書類 (その領収をした金額のうち、特定一般用医 薬品等購入費に該当するものの金額が明らかにされているものに限ります。) 

 2 この特例の適用を受ける居住者がその年中に取組を行ったことを明らかにする書類(氏名、取組を行った年及び取組に係る事業を行った保険者、事業者若しくは市町村(特別区を含みます。)の名称又は取組に係る診察を行った医療機関の名称若しくは医師の氏名の記載があるものに限ります。)

3 適用関係

上記 の制度は、平成29年 1 月 1 日以後に特定一般用医薬品等購入費を支払った場合について適用されます(措法41の17の 2 ①)。  

 次に条文を引用します。

◎租税特別措置法(昭和 32 年法律第 26 号)(抄) 

※所得税法等の一部を改正する法律(平成 28 年法律第 15 号)による改正後

(特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合の医療費控除の特例)

 第四十一条の十七の二 医療保険各法等(高齢者の医療の確保に関する法律第 七条第一項に規定する医療保険各法及び高齢者の医療の確保に関する法律を いう。次項において同じ。)の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高い一般用医薬品等(医薬品、医療機器等の品質、有効性 及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第四条 第五項第三号に規定する要指導医薬品及び同項第四号に規定する一般用医薬品をいう。次項において同じ。)の使用を推進する観点から、居住者が平成 二十九年一月一日から平成三十三年十二月三十一日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合において当該居住者がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として政令で定める取組を行つているときにおけるその年分の所得税法第七十三条第三項に規定する医療費控除については、その者の選択により、同条第一項中「各年」とあるのは「平成二十九年から平成三十三年まで の各年」と、「医療費を」とあるのは「租税特別措置法第四十一条の十七の 二第一項(特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合の医療費控除の特例) に規定する特定一般用医薬品等購入費を」と、「医療費の」とあるのは「特定一般用医薬品等購入費の」と、「その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の百分の五に相当する金額(当該金額 が十万円を超える場合には、十万円)」とあるのは「一万二千円」と、「二百万円」とあるのは「八万八千円」として、同項の規定を適用することができる。この場合において、同条第三項中「第一項」とあるのは、「第一項(租税特別措置法第四十一条の十七の二第一項の規定により適用する場合を含む。)」とする。

2 前項に規定する特定一般用医薬品等購入費とは、次に掲げる医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第二条第一 項に規定する医薬品をいう。以下この項において同じ。)である一般用医薬品等のうち、医療保険各法等の規定により療養の給付として支給される薬剤との代替性が特に高いものとして政令で定めるものの購入の対価をいう。

一 その製造販売の承認の申請(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全 性の確保等に関する法律第十四条第三項の規定による同条第一項の製造販 売についての承認の申請又は同法第十九条の二第五項において準用する同法第十四条第三項の規定による同法第十九条の二第一項の製造販売をさせることについての承認の申請をいう。次号において同じ。)に際して既に同法第十四条又は第十九条の二の承認を与えられている医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なる医薬品

二 その製造販売の承認の申請に際して前号に掲げる医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が同一性を有すると認められる医薬品

3 第一項の規定により所得税法第七十三条の規定を適用する場合に必要な技術的読替えその他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

 租税特別措置法第四十一条の十七の二は、所得税法の関係条文を読み替えて適用する構成になっていますので、従来の医療費控除の文脈の中で考えることになります。
 
セルフメディケーション税制を適用するにあたって、前提条件となる「人間ドック、インフルエンザの予防接種、事業主健診、メタボ健診、乳がん・子宮がん健診」それ自体の費用は、セルフメディケーション税制による「医療費控除」の対象外であること。また、その前提条件となる「人間ドック、インフルエンザの予防接種、事業主健診、メタボ健診、乳がん・子宮がん健診」は、納税者本人(この特例の控除を受ける者)が取組を行うことは要件とされていますが、 その者と生計を一にする配偶者その他の親族が 取組を行うことは要件とはされていないこと。この2点については、誤りやすいので注意が必要です。

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